民意を得たと言えるか
庶民の為にこそ力を
今月の提言者 大野ひろ子さん / NPOみなと
大阪のダブル選挙で誕生した橋下市長と松井知事。「民意を得た」 の大宣伝に乗り、言ったが勝ち、やったが勝ちの姿勢がエスカレートしていますが、本当に 「民意を得た」 のでしょうか。橋下票は全有権者の37パーセントに過ぎず、52万超の人々は明確に 「橋下NO!」 の選択をしたのです。
しかも橋下氏に投じた人が必ずしも都構想や教育基本条例・職員基本条例案を理解していたのではないことは世論調査でも明白。その多くは 「実行力ある変革者」 の装いに、閉塞感を突破する何かを託したのではないでしょうか
◆市民財産売り財界へ
「日本の政治で一番重要なのは独裁」 と公言して憚らない橋下氏。バックには財界・マスコミ・元中央官僚・御用学者らがズラリ。めざすは庶民の利益ではなく金持ちの為の政治です。
それが証拠に早速、「地下鉄は民営化」 「バスは切り離す(=切り捨てる)」 と宣言しました。民営化とは市民の共有財産を私企業に売り飛ばすこと。買う側は濡れ手に粟、目的は利潤追求だから必ず 「命と安全」 「市民の便宜」 より 「もうけ」 となります。JR尼崎事故や原発災害を見るまでもなく、民営化で犠牲にされるのは市民。その財産を売り飛ばして 「財政健全化」 と言い、他方で巨額の税金を巨大プロジェクトへこれが橋下流行政改革なのです。
◆仮想敵叩きとデマで
そんな政治を隠す手法が 「仮想敵」 をデッチ上げて政治への不満や怒りの矛先を向けさせる人心操作。公務員や労働組合を 「市民の敵」 と攻撃し、「公務員の組合がのさばるとギリシャになる」 とぶち上げますが、ギリシャ危機の原因は体制と巨大金融資本のマネーゲーム。こんな無知とデマを合わせた宣伝も独裁政治の手法です。
そもそも働く者が数世紀の闘いを経て勝ち取り、憲法にも謳われている労働組合活動への敵視と攻撃は、明らかに憲法違反であり不当労働行為。憲法遵守義務のある公務員のトップとしてまずやらねばならないのは憲法を守ることです。
◆本当に公務員が敵?
では本当に公務員が市民の 「敵」 なのでしょうか。貧困や災害など市民生活の現場で体を張って働いているのは公務員労働者です。彼らを減らし身分を不安定にして困るのは市民です。高級官僚と現場の公務員労働者を一緒くたにして非難するマスコミのまやかしを見抜きましょう。
また公務員 「優遇」 が問題なのでしょうか。否、民間の賃金が低すぎるのです。これも財界と政府が労働者保護の法律を改悪し続けてきた結果です。公務員を叩いても民間労働者の処遇は改善するどころか、もっと過酷な状況に追いやられるでしょう。最低賃金のアップ、派遣法の抜本改正、有期雇用の廃止―等々こそやるべきです。
独裁を振りかざす橋下さん。その強い意志を庶民の為にこそ発揮して下さい。実はそれが、あなたに一票を投じた人々の真の 「民意」 なのではないでしょうか。
(2012年1月15日)