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 「♪君は行くのかそんなにしてまで―」(昭和41年『若者たち』)。いつの時代にも若者は世の希望であり地域の宝です。どんな暗い世相でも純粋な心とまっすぐな行動で人々を励ましてきました。今、先の見通せない平成不況の只中で、世のため地域のため、家族のため自分のために何が出来るのかを探りつつ、懸命に生きる港区の若者たちを追いました。シリーズ第4回は、「日本発の世界ブランドを!」 と自然素材の工芸品づくりに情熱を燃やす一人の青年にスポットを当てました。

工芸品の工房を主宰 淡路谷佳幸さん(22)(市岡)
        

 朝7時半から家業の手伝い。昼間も店番や配達などにつきながら工芸品やパソコン製作に従事。深夜まで仕事を続け、寝るのは朝方4時。加えて金曜の夜と日曜の朝には剣道の稽古へ。こんな多忙な、しかし充実した日々を送っているのは淡路谷佳幸(あわじたによしゆき)さん(22)。れっきとした自営業者であり、独自ブランドを掲げた工房の主宰者なのです。

◆ 「ヨッピー」 ブランド
  佳幸さんは平成元年磯路に生まれ、磯路小、市岡中から高校を経て化学の専門学校へ。卒業した昨年12月、21歳の若さで 「ヨッピー」 ブランドを立ち上げました。そのロゴは月や木や人の姿をデザイン化したもので、神秘的な中にも人間的な温かみが感じられます。手がけるのは工芸品とパソコンの製作です。このうち 「ルナ・ロッサ」(イタリア語で赤い月)の名で行なう工芸品づくりは三部門から成り、レザー部門では牛・エイなどの革(かわ)を素材に財布・名刺入れなどを、アクセサリー部門では孔雀(くじゃく)の羽根などを素材にブローチなどを、ジュエリー部門では純銀を素材にブローチなどを製作・販売。「ピーシー・スタジオ」 の名で行なうパソコン製作はオーダー専門で、監視カメラのサーバー(統括)用パソコンなどオリジナル製品を手がけています。

◆一品一品に心込め
  この 「ヨッピー」 にかける思いを佳幸さんは次のように語ります。
  「製作にあたっては、どれだけ使い込まれても隙(すき)がないよう一品一品に心を込め、『こんな所まで手を抜かずにやってくれている!』 と感動や愛着を感じてほしい。そして、そんな手づくりの良さを保ちながら、やがては自分がデザインしたものを量産し、エルメス、ルイヴィトンなどに負けない世界ブランドへ発展させたいと考えています」。
  その言葉を裏付けるように、見せてもらった製品は、エイ革のビーズ状の表面を生かした財布や、なめして滑らかな光沢を出した名刺入れ、牛革をカンガルー革(強くて朽ちない)のレースで縁(ふち)取りした財布、裏張りにも羊皮(ヤンピ)などの天然素材を使った手帳、また鮮やかな孔雀の羽根をあしらったフライブローチ(釣り針をイメージしたブローチ)等々、どれもが実に独創的かつ丁寧・繊細でした。
  その一方で注目されるのは、こうした自らの事業に情熱を注ぎながら、家業の手伝いにも熱い気持ちで臨んでいることです。家業は淡路屋商店の名で曽祖父の創業から80年。港区の燃料販売業の老舗です。佳幸さんは小学生の頃から 「ドライアイスを運ぶ」 などの手伝いをしてきましたが、「地元に愛されてきたこの商売をこれからも末長く続けてほしい。そのためにも、システムの効率化など自分に出来ることで役立ちたいと考えています」。

◆剣道あればこそ
  加えて注目したいのが剣道への姿勢。剣道は父親・松之助さん(64)(港剣友会会長)の影響で3歳から稽古を重ね、現在四段。港区民剣道大会では中学生の時に個人優勝、高校卒業後は団体戦にも出場し、何度も優勝を飾っています。「剣道は体力と共に礼儀や忍耐力、集中力などが養われ、人間として豊かになれます。また一瞬で勝負が決まる怖さがあり、心の在り方が問われます。剣道で培った体力や精神力、また人との繋(つな)がりがなかったら、恐らく起業の気魄(きはく)や物づくりへの姿勢も出てこなかったでしょう」。

◆無敵という気がする
  そんな佳幸さんへの期待を、小学校からの友人である大熊雄士さん(22)は次のように語ります。
  「子供の頃から物作りが好きで、皆からエジソンならぬ 『アワソン』 と呼ばれていましたが、まさかこんな早く起業するとは。でも一つの事を始めたら形になるまでやめない性格、関連法規など基礎の部分をしっかり自分の物にした上で創造へと進む仕事スタイル、また人当たりの良さもあり、そうしたものを合わせたら無敵という気がします。実際、彼の仕事場やホームページからは、何か新しい物を生み出すなという空気を感じます。ただ、余りにも頑張り過ぎて体を壊さないかと心配ですが、その点も、剣道で培った体力と精神力、自己管理能力で克服してくれると信じています」。
   
◆順調に行ってほしい
  また母親の頼子さん(54)は 「小さい頃から細かい作業が大好きで、何時間も没頭しているのをよく見ていました。一人で広い社会へ踏み出すのは親としてとても不安で、特にこの過酷な競争社会で世界ブランドという夢を実現するのは大変でしょうが、何でも丁寧にする性格や友達の協力、それに実際お客様が喜んで下さるのを見て、このまま順調に行ってくれればと願っています」。
  そんな期待の中、「生まれ育った港区に仕事を通じて貢献したい」 「一人一人の得意な分野を生かして助け合いやコラボレーション的な催しなどできたら」 と地域や同世代への思いも語る佳幸さん。その若さと純粋さ、何より 「日本発の世界ブランドを!」 という情熱で、世のため地域のため、自分のため家族のためにますます輝き続けてほしい―そう願わずにおれません。
http://lunarossa-yppi.com/

2011年11月15日(147号)
  
 
 
 
 
 
 
 
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