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港区で4千人超、20年で3倍

 生活保護人口が増え続けています。全国的には昨夏から過去最多を更新中。全国一受給率が高い大阪市では昨春15万人を突破。港区ではこの20年で3倍近くに増え、昨年は保護人口4千人台、保護率5パーセント前後(全国平均の3倍超)で推移。大阪市や港区の貧困化が全国水準を大きく超えて進んでいることが分かります
  主な原因は、@バブル崩壊後の企業リストラの蔓延 Aリーマンショック以降の不況の深止まり B東京一極集中と地方経済の衰退 Cこれらを一層推し進めた規制緩和と自己責任の政治です。かつてない貧困化の中、私たち区民はどう生きるかが問われています。

◆失業者や母子家庭が
  港区内でここ数年の間に生活保護を申請した人たちの事情を聴いてみました(これは本紙独自の情報入手によるもので、港区保健福祉センターからの情報提供によるものではありません)。

Mさん(30代女性・母子家庭)はパートで仕事をしていましたが、小学生の子供の問題で休みがちになり、やむなく退職。収入は児童扶養手当と児童手当だけになりました。受けていた就学援助が学校徴収金だけに変わったため学用品も買えなくなり、家賃4万2千円も3カ月滞納。生活保護に抵抗はありましたが、「もう無理」 と申請し、受理されました。その後、子供の問題で保健師や児童相談所に相談して診断を受けたところ、発達障害と判り、現在は子供を通院させながら生活しています。

Hさん(50代男性・単身)は建築関係の日雇いの仕事をしていましたが、2010年秋頃から仕事がなくなり、友人からの借金などで食い繋いでいました。家賃は滞納、ガスは止めてもらい、電気は滞納で止まり、国保も滞納で短期証になり、膝の持病の悪化に医者にもかかれない状態でした。ようやく月に4日ほど仕事があって1カ月分の家賃3万円弱を払いましたが、「もう限界」 と生活保護を申請し、受理されました。現在は整形外科に通院しながら職安に通っていますが、年齢と無資格のため仕事は見つかっていません。

Kさん(60代夫婦)は夫が心筋梗塞で入院し、勤め先を退職しました。夫の年金は月約4万円。高血圧の持病を持つ妻の給料は月約6万円。マンションのローンが払えなくなり、弁護士に相談。自己破産の手続きを始めた上で生活保護を申請しました。受理されたかどうかは不明ですが、夫は現在も心筋梗塞で通院を続けています。

Iさん(40代男性・単身)は20代から同じ会社で清掃の仕事を続けてきました。15年前までは月20〜30万円の収入がありましたが、次第に仕事が減り、今では日給7千円で月7万円ほど。家賃は2万2千円。国保料を滞納し、国民年金保険料も免除申請。両親や兄弟が生活保護を受けているため身内からの援助も望めず、手持ち金3千円、貯金360円になった時点で生活保護を申請し、受理されました。現在も清掃の仕事を続けながら、仕事がない日は職安で別の仕事を探しています。

Aさん(60代男性・妻と障害のある息子を扶養)は印刷関連の仕事を20数年続けてきましたが、不況で仕事が減り続け、受注しても採算の合わない仕事が多く、数年前からは経費が売上を上回るようになりました。手伝ってくれていた息子は障害認定がないまま外へ働きにも出られず、妻の内職収入も僅かで、生活は次第に困窮。思い余って生活保護を申請しました。別の仕事を探した方がよいのではという窓口に、「仕事には誇りを持っています。真面目に働いているのに食べていけない国民を助けるのが生活保護。何のために憲法第25条(すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する)があるのですか」 と交渉し、認められました。現在も仕事は続け、息子は担当者の助言で障害認定の手続き中。Aさんは 「何とか食べていけるだけの利益を上げて保護なしでもやっていけるよう営業努力はしていますが、この不況では見通しが立ちません」 と話していました。

 以上、取材の範囲では、事情の違いはあれ、どのケースもギリギリまで我慢した末の申請でした。

◆区は就労支援にも力
  こうした中、生活保護などに関する区民の公的な相談窓口である港区保健福祉センター生活支援担当(区庁舎2階、6576-9863)では次のように話しています。
  「区内の生活保護人口の増加の度合いは2010年をピークに緩やかになりましたが、着実に増加しているという印象です。これまでの病気・高齢・障害・離婚などを原因とした申請に加え、2009年頃からは、単身世帯で、特に病気はないが、失業し、新たな仕事が見つからないことによる生活困窮を理由とした申請が目立ってきています」
  「こうした現象の原因は、不景気による失業の増加と、自立できる収入のある仕事が少ないことに尽きます。にもかかわらず、国の失業対策は不十分で、それを生活保護が引き受けているのが現状です」
  「今後、著しい景気の改善は見込めないでしょうが、少しずつ仕事が増加し、就業・自立のケースも出てきています。しかし、仕事に就いてもその収入だけでは生活していけず、不足分を生活保護で補うケースも多くなると思われます」
  「こうした中、当センターでは、不正受給への市民の厳しい目もあり、その人の稼働能力が十分活用できる方向での対応を心がけています。仮に生活保護の適用とならなくても他の支援方法が見つかる場合もありますので、その場合はそれらを紹介しています。また、今は区で就労支援が出来るため、就労可能なケースでは就労支援に結びつける努力(求職活動への同行や面接の助言など)をしています。いずれにしても、生活保護の受給は申請があって初めて可能になりますので、まずは気軽に当センターへ相談に来て下さい」

◆生存権を土台に運動
  一方、港区で40数年、生活困窮者への支援や行政への要求運動を続けてきた「港生活と健康を守る会」(磯路2-5-3、6576-4809)では次のように話しています。
  「ここ1〜2年の生活保護申請ではやはり高齢の方が多く、『年金が少なくて生活できない』 『病気になっても医者にも行けない』 というケースが目立ちます。若い世代では母子家庭が多く、『小さい子供を抱え、仕事が見つからない』 などの理由による申請が多いようです。私たちは憲法25条にある生存権を土台に、これを行政にも守ってもらうよう求めながら、今ある制度を活用して区民の生活と健康を守る活動を行なっています。独りで悩まず、まずは気軽にご相談下さい。不安や苦しみを出し合い、助け合いながら、国民の大多数をますます貧困に追いやる政治のあり方を一歩一歩変えていきましょう」

 
 
 
 
 
 
 
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