「野良猫が繁殖して困っている」 「身勝手な餌やりが多すぎる」 「糞や食べ残しで公園が汚くなっている」 ―こんな苦情が絶えないことに対応して大阪市は昨年4月、「公園ねこ適正管理推進サポーター制度」 を発足させました。これは、市民と行政が力を合わせて 「公園の環境保全と動物愛護の推進」 を図ろうという取り組みで、具体的には、研修を受けた市民が 「サポーター」 になり、@公園の猫に不妊・去勢手術をして増えないようにする A一代限りとなった猫へのきちんとした餌やりで少しずつ数を減らす B後始末や周辺清掃で公園の環境美化に努める―というものです。制度が2年目に入った機会に、1年間活動してきた尾崎キヌ子さん(65)と東城(とうじょう)晴美さん(67)(共に池島在住)に、活動の実際や問題点、要望などを訊きました(インタビュー内容は二人のお話を総合したものです)。
|
「殺す(処分する)にも生かすにも費用がかかるのなら、ぜひ生かす方に使って」 と、基金創設などによる不妊・去勢手術費の全額公費負担を訴える 「ねこサポーター」 の尾崎キヌ子さん(中央)ら=4月24日、天保山公園で |
◆どんな気持ちから 「ねこサポーター」 になり、実際にどんな活動をしてきたのですか?
私たちは猫などの生き物が大好きということもありますが、何より 「人間の身勝手で捨てられた不幸な生き物の大切な命を一つでも二つでも助けてやりたい」 という気持ちからこの制度に応募し、研修を受け、昨年4月から天保山公園で活動してきました。
毎朝1〜2時間、公園内に数匹いる猫への餌やりや周辺の清掃などを行い、不妊・去勢手術もしてやりました。また無責任な餌やりなどを見かけたら穏やかに啓発することや、猫を快く思わない人たちの立場を尊重しながら活動することも心がけてきました。そして3カ月に一度、活動報告書を市に提出しています。
◆その中でどんなことを感じましたか?
@認定証と腕章を付けて堂々と世話ができること A餌やりなどに懸念を持つ人たちにもきちんと説明ができ、好意的に理解して頂けること B猫好きだがサポーターではない人たちが、餌やりを自粛したり周辺を綺麗にするなどの協力をして下さるようになったこと C私たちの活動によって 「公園の環境保全と動物愛護」 を進める大阪市に貴重な資料やデータを提供できること―などを嬉しく感じています。
◆その一方で、何か問題だと思う点はありますか?
はい。@不妊・去勢のために猫を病院へ連れて行く労力 A不妊・去勢の手術費 B毎日の餌代―などは依然として、この制度が出来る前と同様、サポーターの大きな負担となっています。そのため、せっかくサポーターを希望しながら、「やっぱりやめとこ」 と思いとどまる方が、私たちの周りでも大勢おられます。
◆そういう状況に対して何が必要だと思いますか?
はい。私たちはこの制度を市民のものとして一層充実・浸透させる立場から一つの提案をしたいと思っています。それは、猫の不妊・去勢手術費の全額公費負担です。
現在、この制度にも手術費への助成(通常1件1万円前後が5千円になる)はありますが、それでもその5千円は私たちサポーターの負担です。これを全額公費で負担してもらえば、さらに多くの市民が、少なくとも経済的な負担感や不安を感じることなく、この活動に参加できるのではないでしょうか。
◆とはいえ財政難が言われる中、実現には困難が伴うと思いますが……
その通りです。が、この点で参考になるのが兵庫県尼崎市の取り組みです。
同市では2007年度から 「野良猫の不妊手術費助成制度」(不妊手術運動に携わる市民を対象に1件1万円、合計100万円を助成)を実施していますが、申請が年間100件を超えるという実情、また 「もっと財政支援を」 という市民の声や議員さんの提案に応えて、この4月1日から 「動物愛護基金」 創設に向けた寄付金を募っています。これは市民からとても歓迎されると共に、同じ運動に取り組む全国の人たちの間でも、「これをきっかけに、実際に基金が創設されたら、もっと運動が広がるね」 と期待の声が上がっています。
◆なるほど、それを大阪市でもということですね?
はい。この尼崎市と同じ形にするかどうかはともかく、大阪市でもぜひ何らかの形で不妊・去勢手術費の全額公費負担を実現してほしいと思っています。もし市全体での実施が難しいというのであれば、それこそ今進められている市政改革≠ナ区長さんの権限が強く大きくなる機会を生かして、港区独自の実施も可能ではないでしょうか。
私たちはこの5月3日、このような趣旨の手紙を大阪市の橋下市長と港区の田端区長に出しました。よい返事が返ってくることを期待しています。
「殺す(処分する)にも生かすにも同じように費用がかかるのなら、ぜひ生かす方に使って頂きたい」 というのが、行政には素人なりの私たちの考えです。
◆なるほど。最後に、港区の皆さんに呼びかけたいことがあれば―
まずは、公園の猫に餌をやるなら最後まで責任を持って世話してほしいということ。そして、できれば私たちのようにサポーターになって、堂々とお世話できるようになって頂けたら嬉しく思います。
私たちはサポーター活動を通じて、市民と行政が力を合わせ、人と動物が共に幸せに生きられ、動物好きな人もそうでない人も共に気持ちよく暮らせる地域社会が実現することを願っています。また大人たちのそんな姿を見せることで、荒れがちな今の子どもたちの心も少しは癒されるのではないでしょうか。そんな温かな共生社会へのささやかな一歩として、不妊・去勢手術費の全額公費負担の提案を、区民の皆さんの後押しも得ながら、ぜひ叶えたいと思っています。
◆
ありがとうございました。これからも毎日大変ですが、罪のない動物たちのため、また全ての市区民が快適に暮らせる地域社会のために頑張って下さい!
◇
「公園ねこ適正管理推進サポーター制度」 についての問い合わせは、大阪市ゆとりとみどり振興局管理課(

06-6469-3822)へ。
2012年5月15日(153号)