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導入の是非 各層に訊く
 
  指定校区以外の小中学校へも行ける(たとえば池島の子が池島小でなく弁天小へ、築港の子が築港中でなく市岡中へ)という 「学校選択制」。これを導入するかどうかを 「各区の区長が決めるように」 と大阪市は進めていますが、区民の間では 「この制度は子どもや地域にとってほんまにええんやろか」 と大きな話題になっています。そこで、そうした区民論議の材料にするため、区内で子どもや地域に関わる人たち5人に、導入の是非や決定までの進め方について意見を訊きました。
    

地域の大人たちに見守られて登校する子どもたち。「学校選択制は本当に子どもや地域のためになるのか」という視点からの充分な区民論議が求められています


地域と子供の関係や
競争の在り方に関心
「判断材料乏しい」 の声も

  まず大阪市はこの問題についてどう説明しているのでしょう。3月の 「港区学校教育フォーラム」 での市教委説明から要約すると―  
 @ この制度は市長が 「指定校区外の学校選択の権利を確保した方がよい」 と考えて導入を公約した。
 A 制度内容などは今後 「熟議」(PTA・小中学校長・区長など)で話し合われ、今秋ごろまとめられる。
 B 他都市の例では 「選択は一定区域内で」 「校区は残し、希望者は全員現校区の学校に入学できる」 「選択は入学前の1回」 「各学校は毎年受け入れ可能人数を公表し、希望者が上回る場合は抽選」 などとなっている。
 C 選択制のメリットは 「特色ある学校づくりが進む」 「学校教育への関心が高まる」 「学校どうしが切磋琢磨して活性化が図られる」 などが考えられる。
 D デメリットは 「学校と地域の関係が弱まる」 「学校間で児童生徒数に偏りが生じる」 「通学時の安全が懸念される」 などが考えられる。
 E 全国では小・中学校とも約14パーセントが導入・実施している(平成18年度)。
 F 導入した前橋市では 「地域と学校の関係が希薄化した」、長崎市では 「児童生徒の偏りが生じた」 などの理由で廃止した。
 G 導入するかどうかは今秋ごろ各区長が決定し、導入となれば最短で平成26年度から実施される。
  ― これを受けて港区では @PTAを中心に全校下で話し合いを持つ(6、7月) A全保護者アンケートを実施する(夏休みまでに)― などの取り組みが予定されています。そこで次の区民の意見がそうした区民論議の材料になれば幸いです。

      地域活動の充実こそ  制度変えずとも特色
           元市岡東中P会長  望月 勝さん
 小学生の頃、土曜の午後に学校の講堂でPTAのお母さんたちと卓球に興じた思い出があり、そんな経験から地域への思いも自然と育まれていったようで、親となってからはそんな地域への恩返しの気持ちもあって、南市岡小P副会長や市岡東中P会長などをやらせて頂きました。3年前からは市岡東中校下 「元気アップ」 の委員長として様々な活動に取り組んでいます。
 そんな中で学校選択制が提案されたわけですが、主に二つの点から賛成でき兼ねます。その一つは安全面です。校区を越えた登下校で事故が発生した場合、一体誰が責任を取るのでしょう。もう一つは地域コミュニティの面からです。この制度の長所として 「特色ある学校づくり」 とか 「学校どうしが切磋琢磨」 などが挙げられていますが、それらはみな今の地域活動の中で達成できることであり、現に南市岡小では地場産業を活かして瓦業者から仕事の苦労や歴史を教わったり、小規模校であることを活かしてきめ細かい花づくりを行なったりしています。むしろ選択によって競争が煽られ、結局は何十年もの間、校区を単位に培われてきた地域社会がバラバラにされる危険性を感じます。
 「進学レベルの高い学校へ」 などの親の気持ちを否定するつもりはありませんが、本当に子供や地域のプラスになるのかという教育的観点に立てば、やはりこの制度には反対せざるを得ません。
 今後、PTAを中心に論議が進められていくということですが、私も 「元気アップ」 活動に取り組みながら、意思表示の機会があれば積極的に意見を述べていきたいと思っています。
   
       選択肢増え嬉しい  問題あれば修正も
         子供がサッカー選手 大家 友紀子さん
 子供や保護者に学校選択権を保障するという考え方には基本的に賛成です。 例えば 「居住地と親の仕事場が離れている」 「校区の境目に住んでいる」 などの場合、指定校に通学する方が却って危険なことがあり、そんな家庭には、より安全に通学できる学校を選べる自由は歓迎されるのではないでしょうか。また 「サッカーの強い学校へ進ませたい」 などと思っても、今なら私立しか道はありませんが、そうした選択が区内とはいえ出来るようになるのはやはり嬉しいことです。
 同時にそうした選択をした場合、親の責任はこれまで以上に大きくなりますから、より慎重な判断や充分な話し合いが求められることになると思います。
 「地域の繋がりが弱まる」 「学校間の格差が広がる」 などの心配も理解できますが、「選択は区域内」 「希望者は全員現在の校区に入学」 など一定の歯止めがかけられるようなので、極端な格差や偏りは生じないでしょうし、仮にそうなった場合は、その時点で修正していけば良いと思います。
 今後PTAを中心に論議が進められていくようですが、そうした場があれば参加したいと思っています。

      子どもは地域で育つ 学力の低下招く競争
        池島子ども見守り活動 勝部 泰臣さん
 私は父が駅長をしていた関係で、小学校で三度、中学校で二度転校し、友達と離れる辛さを身にしみて感じてきました。また6年前からの見守り活動の中で、地域と子供の結びつきの大切さを肌で感じてきました。そんな中で出された学校選択制ですが、反対です。
 子供は家に近い学校で保育園・幼稚園からの友達と机を並べ、揉まれながら成長していくのが理想であり、特に小学校時代、それも都会の中ではそのことが特に大事だと思うからです。
 「学力テストで大阪の子の成績が悪かったから」 というのが導入理由の一つのようですが、誰しも学力向上は願うものの、興味と意欲を持ち、進んで頁をめくってこそ知識は身につくのであって、もし学校を好き勝手に選べるとなったらますます競争が煽られ、格差はいよいよ大きくなり、全体の学力はさらに低下すると思われます。つまり、まずそういう戦後教育の在り方こそが問題なのであって、それを一層エスカレートさせるような選択制には反対せざるを得ません。
 仮にこの制度が実施された場合、学校を選ぶのは、特に小学校入学時は親であり、親の判断が子の将来を左右することになります。ですから親の皆さんに訴えたいのは、一流高校 → 一流大学 → 一流企業というエリートコースを描いてお受験に熱を上げるより、地域の友達と遊ぶこと、生まれた土地を好きになること、その中で子の才能を伸ばしてやることにこそ熱心になってほしいということです。
 結論として 「学校選択制のメリットは何もない、親の横暴=i失礼!)を助長するだけだ」 ということを申し上げたい。

     一層の競争激化心配 親心≠ニの葛藤も
         八幡屋小PTA役員  松原 三希子さん
 この制度を導入したものの、様々な弊害から廃止した自治体もあるのに、「なぜ今ごろ?」 というのが一番の思いです。それに、区長判断で決まるということですが、港区で導入し、西区では導入しないなんて、おかしくないでしょうか。また学校維持費が厳しくカットされる中で、なぜ余計な費用をかけてまで論議に乗せるのでしょう。
 「学校間で切磋琢磨」 といえば、聞こえは良いですが、必ず競争が激化し、無用なストレスで先生や子供を苦しめることになります。学校では助け合い、励まし合い、伸ばし合いこそ必要であって、競争、それも点数や順位を争うような競争は百害あって一利なしだと思います。ましてこうした選択と競争の先に、子供たちから学校と地域を奪うことになる 「学校統廃合」 があるとすれば、絶対に認めることはできません。
 とはいっても、進学やクラブ活動に活発な学校へ進ませたいという親心≠ヘあり、もし導入されたら正直、迷うかもしれません。
 でもやはり、子供の安全や健全な成長という面から考えれば、この制度には反対です。今後の話し合いには積極的に参加していきたいと思っています。

      論議通じ地域づくり 判断の材料を充分に
         港区政会議の部会長  薮井 寿一さん
 私は3人の子の父親ですが、これまでPTA活動などに積極的でなかった自身への反省も込めて、同時に区民の大半が地域問題に余り関心を払ってこなかった現状を少しでも改善したいと思い、このほど 「港区政会議・こども青少年部会長」 を務めさせて頂くことになりました。その立場から言えば、今はこの制度についての賛否を性急に求めるよりも、区民総体がしっかり意思表示が出来るところまで充分論議を尽くすこと、つまり、一部の賛否や市長への好き嫌いなどに左右されることなく、一人一人が自分の頭で判断しうるに必要かつ充分な材料を提供する事こそ先決と考えます。そして、そんな取り組みを通じて地域の連携や信頼関係を築くことが出来れば、それこそ学校選択制云々よりももっと大きな、根本的なところでの成果が得られるのではないでしょうか。
 その点で言えば、現在、市から提供されている判断材料は不充分と言わざるを得ません。「導入自治体が廃止した」 という実例にしても、地域総体の判断なのか政局絡みなのか、どんな割合での反対だったのかなどの分析もされていません。
 そんな現状を踏まえて私が出来ることは、今後の全校下論議をきめ細かく進め、それを全保護者アンケートに結実させると共に、その過程での区民の声を市の 「熟議」 へ上げていくことだと考えます。そうして最終的には、公募区長がそうした区民の意思を充分反映した決定が下せるようもっていきたい。そして、こうした港区の取り組みを先進例として、全市をリードしていく役割も果たせたらと考えています。

 
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港新聞社(代表・飯田吉一)
大阪市港区田中3-3-3