「橋下市長の改革で地域はどうなるんや」「ほんまに地域のプラスになるんやろか」などの声が今、区内に渦巻いています。というのは、大阪市が5月11日に「市政改革プラン(素案)」を発表し、これに対する市民の意見が5月中〜下旬に集められ(28399件あり、うち 94%の26763件が反対意見だった)、それを踏まえて6月には「案」としてまとめられ、さらに市会での議論を経て今月末に「市政改革プラン」として決められようとしているからです。
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「市政改革」で地域はどうなる?(写真は区内の町会の総会風景) |
◆メチャ分かりにくい!
そこで、この「市政改革プラン(案)」を読んでみましたが、「色々書いてあるけど、メチャ分かりにくい」というのが率直な感想です。その上で、市や区の担当者から説明も受け、ようやくそのポイントや目指すところが分かってきました。その内容を「地域活動との関わり」という点に絞って、読者の皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
◆改革プランのポイント
8月1日に港区長に就任する田端尚伸(ひさのぶ)さん(現区長)によると、この市政改革プラン(案)の狙いは、「成長は広域行政、安心は基礎自治行政」という考えを基本に、「市民協働を更に発展させ、市民に身近な区で施策や事業を決定する行財政運営をめざす」(広報みなと)とされていますが、その内容は、@大きな公共を担う活力ある地域社会づくりA自律した自治体型の区政運営Bムダを徹底的に排除し、成果を意識した行財政運営―という、「なるほど」と思わせる3本の柱から成っています。
このうち特に地域に関係があるのは@ですが、これはさらに、@豊かなコミュニティづくりA地域活動の活性化B多様な協働の推進C市民による自律的な地域運営の実現D地域資源が循環する仕組みづくりE中間支援組織の活用―という、「これももっともなことや」と思わせる6つの項目から成っています。
◆大半は平松時代から
問題はそれらの中身ですが、その大半は、「地域活動への住民参加を促す」「地域団体が民主的に運営され、透明な会計処理ができるよう助ける」「活動団体どうしのネットワークづくりを支援する」「活動内容を限定せず柔軟な財政的支援を行う」―など、平松市長時代から追求されてきた内容を引き継ぐものです。しかし、Dの中にこのプランの本当の狙いが見えます。
◆地域のビジネス化?
そのDでは、「地域資源が循環する仕組みづくり」のタイトルのもと、「多様な分野におけるコミュニティ・ビジネス化、ソーシャル・ビジネス化の支援」「本市の事務事業の社会的ビジネス化」などの取り組みが挙げられています。
これは要するに「地域活動をビジネス感覚でやりましょう」と勧めるもので、具体的には「地域活動に必要な財源は自分たちでビジネスをやって確保しなさい」、その一方で、「役所がこれまでやってきた分野は企業などに売り渡し、ビジネスとしてやってもらいます」というものだと受け取れます。
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「市政改革」は地域の為になるのか、
市民のチェックが求められていま
す(写真は区内の町会の総会風景)
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◆どうなる地域の絆
これは果たして地域にとってよいことなのでしょうか。これまで地域と役所が協働で追求してきた「コミュニティづくり」「防災力強化」「環境美化」といった目的を果たすのにプラスになるのでしょうか。むしろ、地域活動にまで経営感覚や市場原理や競争意識を持ち込むことで、ただでさえ薄くなりつつある人間関係を一層バラバラにし、結局は、謳(うた)い文句とは逆に、地域にとって一番大切な、住民間の「繋(つな)がり」や「絆(きずな)」を破壊することにつながるのではないでしょうか。正直、そんな疑問や不安を抱かずにおれません。
◆「採算では測れん」
この「市政改革プラン(案)」については、区内の複数の町会長などからも次のような声を聞きました。
「会議で説明を受けたけど、よう分からん。他の会長さんらもたぶん分かったはれへんやろ」
「地域活動は、文化・芸術と同じように、採算という物差しでは測れん。そんな分野を、企業感覚・経営感覚を持ってやりなさい、と言われているように感じた」
「(戦後、地域活動の中心を担ってきた)地域振興会も特別扱いしません、(歴史も経験も浅い)企業やNPOと同列で、ビジネスとして競い合いなさい、役所は手を引きますから、ということなんか…」
「これまでの町会活動にも確かに問題はあったけど、それはそれで一つ一つ直していったらええこと。それを逆手(さかて)に取って、地域を会社みたいな姿に変えていくのはいかがなもんや」。
◆自分で読み、判断を
同じ文章でも、受け取り方は人それぞれですから、本紙とはまた違う意見を持たれる方もおられるでしょう。ですから、関心のある方はぜひとも自分でこのプラン(案)の内容をご覧になり、自分でそのポイントをつかみ、内容の是非を判断されるようお勧めします(港区役所区民情報コーナーや大阪市のホームページで見ることができます)。そして、たとえ市議会でこのプランが決定されようが、「あかんもんはあかん!」と声を上げることも必要ではないでしょうか。身近な地域社会が崩壊したあとで「こんなはずやなかった」と後悔しないためにも―。