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学校園を殺伐とさせる教育基本条例案撤回を

今月の提言者 開 賢一さん(52) / 弁天

 橋下大阪府知事が代表を務める 「大阪維新の会」 が 「教育基本条例案」(以下条例案と略)を9月22日に発表して2カ月近くがたとうとしています。
  学校園の現場では、校園長先生を含め、条例案について多くの危惧する声や反対意見が起こっています。


◆子どもは「人材」?
  私がこの条例案を読んで最初に感じたのは、子どもに対する優しさや温もりが 全く見られないことです。それは、その 「基本理念」 で、子どものことを 『人材』 としていることに表われています。これは 「子どもを育てる」 のではなく 「人材を育成する」 ということです。子どもたちをまるで木材か製品のように見ているとしか思えません。
  では、誰にとって都合のよい 『人材』 なのでしょう。その答えは基本理念の(6)に書かれています。「激化する国際競争に迅速的確に対応できる、世界標準で競争力の高い人材を育てること」 と。ここには、一人一人の子どもの個性を大切にし、将来、子どもたちが社会の主人公として主体的に生きていくための力をつけていくといった視点が全く感じられません。

◆保護者要求はねつけ
  次に、この条例案が実施されると学校園と保護者の関係が大きく損なわれることになります。
  今、各学校園では地域に開かれた学校園づくり、保護者の声に耳を傾けた運営が進められています。しかし、条例案第10条・保護者の項では 「社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない」 となっています。保護者の 「子どもたちのために30人学級を実現してほしい」 などの要求や願いを、不当な要求として学校園の側がはねつけるようになればどうでしょう。学校園と保護者の間で深い溝ができてしまうのではないでしょうか。

◆教職員を追い立てる
  最後に、条例案では教職員を校園長がS・A・B・C・Dの五段階で評価し、必ず5パーセントの評価をつけ、評価が2年続くと免職などの処分が行われます。簡単に言えば、他人が失敗したら自分が得をするようなシステムになるのです。 保護者の皆さんには担任の先生しか目に入りにくいと思いますが、学校園の現場では校園長先生はじめ全ての教職員が協力し合って日々の教育に取り組んでいます。しかし、この条例案が実施されると、先生方が知恵を出し合い、よりよい方法を模索することなどできなくなってしまい、その結果、一番被害を受けるのは子どもたちなのです。
 知事が設定した教育目標が学校園に押し付けられ、従わない教職員は命令違反で免職にする。教職員は評価を気にしながら数値目標に向け子どもたちを追い立てる。結果、子どもたちの笑い声が消え、殺伐とした学校や幼稚園になるのは目に見えています。
 この条例案には他にも多くの問題点があります。保護者・地域の皆さんと力を合わせ、この条例案を撤回させる運動を広げていくことが重要だと考えます。
〈大阪市立大正北中学校教諭・大阪市学校園教職員組合港支部支部長〉
(2011年11月15日)
 
 
 
 
 
 
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